STUDY

MEMS技術を応用したマイクロロボット

3次元コンプライアント・メカニズムによるマイクロシステムの構築手法
研究担当者:淺村(18-20),金井(19-21)

通常のロボットでは,関節に駆動軸が存在する.このため,軸受などを含めて複数の部品を組付ける必要がある.マイクロロボットでは,それらの部品が全て小さく,ハンドリングするだけでも大変で組立てコストが高くなる.これに対しコンプライアント関節は,昆虫のようにフレキシブルで一体化された構造の関節である.ロボットフレームをすべて一体化して設計し,その一部がフレキシブルに曲がることで関節となる.今年は3Dプリンタで作成し,来年・再来年でMEMSプロセスに展開する.

積層容量型角度センサ
研究担当者:原(20-22),永田(18)

2020年度に原君がMNC2020参加し,JJAPに採択された.多脚型マイクロロボットの関節で、構造的に複雑なロータリーエンコーダの代わりに使うことを想定している。MEMSプロセスの適用と,もともとの機能である静電アクチュエータとしての駆動とセンシングの両方の機能を成立させて,自己センシング可能なスマートアクチュエータにできれば,かなり高いジャーナルへも投稿できる.

  • 折紙外骨格構造によるマイクロロボット,MEMS折紙(明石,長合,馬淵,淺村,金井)
  • 形状記憶合金アクチュエータ(SMA) 駆動によるマイクロロボット/6脚歩行ロボットの歩行動特性のスケーリング効果(石川、淺村、松井、小松、豊嶋、植松、近藤智康、小幡)
  • マイクロ・アクティブ放熱による記憶形状合金ワイヤの伸張時応答特性の向上手法(淺村、松井)

海洋マイクロプラスチック関連研究【環境推進事業研究(研究代表者:東京海洋大学・荒川先生),科研基盤研究B(研究代表者:芝浦工業大学・小池先生)】
研究担当者:下元(21),久保田(20)

近年,海洋マイクロプラスチック(MMPs: Marine Micro-Plastics)の問題が重要性を増している.特にこれまで実態が調べられてこなかった350ミクロン以下の海洋マイクロプラスチック(SMPs: Super Micro-Plastics)の調査が重要になってきている.本研究では連続的にSMPsの分級が実施可能で,目的サイズのSMPsを取り出すMEMSデバイスを開発する.

振動センサ群によるビッグデータ解析【東北大・桑野先生との共同研究】
研究担当者:杉山(21),後藤(19)

MEMSセンサは高機能なセンサを小型・高感度・安価に製造できるため,車載センサとしても用いられている.今後も車1台に搭載されるセンサは増え続けると考えられる.これら相当数のセンサから得られる膨大なデータから,有意義な意味を持つデータをどのように見つけ出すのかが大きな意味を持つ.測定されるセンサのRAWデータをデータ解析ができるフォーマットへの変換,データベース化,検索,判断など多くの課題がある.

櫛歯アクチュエータによる重心偏移によるマイクロミラー駆動
研究担当者:近藤(20)

横河電機と産総研主導で多くの企業が参加して進められているミニマルファブを使って作るマイクロミラー.櫛歯アクチュエータでミラーの重心を偏移させることができるようにしておき,ブランコのようにミラーの共振周波数にあわせ,タイミングよく重心を偏移させることでミラーを駆動する新原理を提案する.外部に強力な磁石が不要になること,ミラーの反射面積を大きくできるなどの利点が考えられるが,本当に動くかはやってみないとわからない.感覚的にはできるはず.

Face Back Projection 用の変形フェイス・スクリーン
研究担当者:(佃20,寺地19)

本研究は2020年度の学内プロジェクト研究(科研費連動)に採択されている.顔型のスクリーンに小型プロジェクタでバックプロジェクションする研究がある(例えばミュンヘン工科大学のGordon Cheng 先生,ドイツミュージアム展示,socibotなど,https://tinyurl.com/yc2b47np).画像によっていろいろな顔・表情が表現できるが,輪郭や鼻の高さなどが変わらず,実空間では違和感の原因となる.小型アクチュエータを使って顔のスクリーンの方を変形させることができれば,遠隔コミュニケーションツールとして,より完成度が高くなる.まず,ワイヤ駆動によるフェイス・スクリーンの試作,SMAアクチュエータの試作・評価,フェイス・スクリーンとSMAアクチュエータの統合などの課題を考えている.

ジャイロスタビライザによるマイクロロボットの姿勢安定化
研究担当者:(遠藤20-21,田中17-19,渡邉17,木村12-14)

田中君が飛躍的に研究を進めてくれたジャイロスタビライザによる倒立振子型ロボットの姿勢安定化制御.今後の展開も大きくなりました.

  • (姿勢角が)2次元での計画軌道に沿った移動の評価
  • 小型化(テーブルトップ,もしくはパームトップサイズ,テーブル上で動ける)
  • 段差乗り越え
  • ジェスチャアームとの統合
  • EusLispやROS2への対応.ラッピングプログラムで,例えば遠隔でゲームパッドでの移動制御など.
  • 見た目のカスタマイズ.ユーザーとの親和性.

自動的に折り曲がる折り紙
研究担当者:(児島20-22,河村19)

自動的に折り曲がる折り紙を考案する.完全に折り曲がらなくても,折り紙の手順のサポートになれば良い.特に子供たちが苦手とする「かぶせ折り」や「中割り折り」などをサポートできると良い.2019年度で河村君がSMP(形状記憶樹脂シート)を使って,ラージサイズまで検証した.2020年度は児島君がSMPユニットの各種特性を調べた.SMPユニット小型化し,MEMS構造体に仕込み,マイクロヒータで順序組立てし,MNC2021への参加,JJAPへの投稿予定.

フリーアングル立体視ディスプレイ
研究担当者:(空20-22,木内17,米持15)

21年度からは廣瀬研と共同研究予定.自動車Aビラー用ディスプレイの拡張版。凹面鏡の代わりとなる光学系をMEMSプロセスでシート状に作成する。マイクロミラーアレイとPDMS光導波路シートの組合せで薄くて自在な方向に任意の画像を提示できるデバイスを作りたい.かなり難しいのでチャンレンジャー向け.

スマートフォンに身体性を持たせたインターフェイスロボット
【名工大・ジメネス先生】(スー20,藤川19)

スマホは高い処理能力,ネット接続,個人情報を持つ機器である.身体性を持てばユーザーと高い親和性を持つIoTインタフェースになる.スマホからbluetooth経由シリアル通信でコマンドだけをロボットに送って制御する方法は,すでに実現されており新規性がない.この手法で問題なのは,折角スマホが高機能なのに,単なるスクリーンインタフェース程度の役割しかしていないことである.スマホのセンサ情報でロボットの姿勢制御
を行うことを目標とする.一番の問題はスマホからのセンサ情報送信が,ロボットの姿勢制御を行うために十分な通信帯域を確保できるか,どの程度正確な時間情報と共にセンサ情報が得られるかであると考えられる.この部分にフォーカスしてシステム構築を行う.

遠隔補助によるロボット教材を用いた計測・制御・プログラミング教育
【ミュンヘン日本人国際学校(JISM: Japanese International School of Munich)との共同研究】

中学・小学校で導入が進められている計測・制御プログラミング教育はIT技術が急速に進歩する社会を背景に,その重要度が高くなっていの複雑な環境下で,予想できない動作をする.このため,様々な状況に対応できる指導者の経験が重要である.しかし,実際には指導者が経験を積む機会や,周囲からのサポートも少ない状況もある.本研究は遠隔補助システムを導入して,機械系大学生がメンターとなることで指導者や生徒を補助する.遠隔システムでの問題点を明らかにし,その解決手法を提案し,その効果を評価する.
2019年度は研究室全体の協力体制で臨んだが,想像以上にJISM側のレスポンスや環境が悪く,長澤の遠隔授業だけのようになってしまった.研究体制から見直して再チャレンジしたい.

質感を計測するテクスチャ・スキャナ(長澤のさきがけ研究テーマ)

質感(テクスチャ)は物体表面への入射方向と放射方向の関数として表現される.この質感を表現する関数は,少なくとも入射方向2自由度,放射方向2自由度,光の波長と強度で6自由度もある.しかも物体表面1点につき,この6自由度特性を測定しなくてはならない.自由曲面での物体表面全体を測定するためには,3次元的にフォーカシングしながら全ての物体表面の点を測定するので,位置座標3自由度,法線ベクトル(面の方向)3自由度が必要.これら全てを合わせると12自由度の関数となる.非常にチャレンジングな研究テーマである.

継続研究テーマ

学術的背景:
マイクロロボット等の可動部分を有するマイクロシステムでは,部品が小さいため組立てが難しい.解決手法としてコンプライアント・メカニズム(柔軟なヒンジと硬い構造体の一体化メカニズム)が提案されている.2次元のコンプライアント・メカニズムは数式モデル化も容易でMEMS (Micro-Electro-Mechanical Systems) の重要設計手法である.3次元は数式モデルの3Dプリンタによる報告だけでMEMSプロセスでは実現されていない.
学術的「問い」:
MEMSプロセスは高精度でセンサやアクチュエータを集積できるメリットがあるが,本質的には2次元の平面微細加工技術である.3次元での実現手法を確立したい.
目的および学術的独自性と創造性:
MEMSプロセスによる折り上げ構造体に,柔軟な素材による形状異方性を持つヒンジ部を埋め込み3次元コンプライアント・メカニズムを実現する.
何をどのように、どこまで明らかにするのか:
折り上げ構造体,柔軟な素材によるヒンジ部埋め込みを同時に実現するMEMSプロセスを確立する.試作した3次元コンプライアント・メカニズムの機械的特性評価,MEMSセンサやアクチュエータの集積化方法まで検討する.

☆ MEMSマイクロミラーを用いた実世界クリッカーのための拡張ポインタ
【広島市立大学・岩城先生との共同研究】(立町)

ユーザーの指の動きをMotion Leap で検知して,指が指し示すオブジェクト表面に別の場所に設置したレーザーポインタからマーカーを表示する.これによって手に何も持っていなくても,まるで指からレーザーが出ているようにオブジェクトを指し示すことができ,ロボットシステムとユーザーの命令インタフェースを構築する.ここまでは岩城研究室で提唱・試作されているシステムである.本研究ではレーザーポインタの光路中に2次元のMEMSミラーを挿入することで,光軸まわりに高速に2次元スキャニングできるため,オブジェクト表面に単なるレーザーの点ではなく,任意のベクター図を表示させることが可能になる.「システムが対象物体を認識している」,「対象物体からポインタが外れている」,「クリックされてアームに把持されるのを待っている」などのシステム・ステータスをそれぞれ異なるレーザーポインタ形状を表示することで,ユーザーが直感的に認識することができる.

☆ Hidden Fix Points Finding 【ミュンヘン工科大LSRとの共同研究】(スー)

電化製品のリサイクルは,可能な限り分解し,材料ごとに回収することでリサイクル効率を高めることができる.この分解にロボットアームを適用して人件費を削減することが望まれる.例えば,薄型テレビの背面パネルを開ける場合,画像認識などでネジの位置を検出してアーム先端に取り付けた自動ドライバでネジを取り外す.この作業の際に画像認識で検出できないネジを,どのように見つけ出すかが本研究の目的である.できるだけネジを取り外した状態で,パネルをもちあげ,パネルの変形量から隠れたネジ位置を推定する.変形からの材料力学的考察による位置推定はLSR側が行うので,当研究室の役割はパネルの材料推定や変形量の測定である.ロボットアーム先端に取り付けたセンサによって,パネル材料のヤング率やパネルの変形を測定する.材料物性は赤外線スペクトル計測,変形量は近接距離センサのスキャニングなどを利用する.

◆ 電磁誘導による無線給電静電アクチュエータ(土田)

無線の電磁誘導によるLEDユニットが販売されている(http://www.x-base.jp)。実は全く同じアイデアを3年前位にテーマ候補にしたが、誰も手を挙げてくれなかった。
LEDが光るということは、少なくとも数十mWは給電できているということである。しかも、製品ベースで受信ユニットが手に入る。受電コイル、直流電圧を作るブリッジ回路までそのまま流用し、あとは静電アクチュエータ本体と昇圧回路を作れば無線給電の静電アクチュエータが作れるはず。無線駆動静電アクチュエータそのものは、すでに実現されているが、給電コイルに高価なアンプを繋いで実現していた。市販の給電装置で駆動する無線給電アクチュエータが作れれば、様々な応用が可能になる。

☆ 汎用ソフトウェアのロボット教育への適用【東大・稲葉先生と共同研究を予定】(稲垣)

導入ロボットとして近藤科学のKXR2足ロボットを用いる.稲葉研では昔からロボットの開発にEusLisp を使っており、最近では外部の研究室でも使ってもらえるようにドキュメントや環境の整備が進められている.ROSにも対応しており,便利なロボット開発言語である.稲葉先生は専門教育にもEusLispを使いたいと考えておられ,そのターゲットがKXRである.本格的なヒューマノイドは敷居が高いが,KXRならば敷居も低く導入しやすい.KXRには小型ヒューマノイドに適用できるMEMSセンサのプラットフォームとしても期待している.将来的には研究を効率的に進めるため,研究室で開発したマイクロロボットにROSやRTM-middleware, EusLisp などの汎用性の高いソフトウェアを導入する.

◆ 円筒基板への両面同時リソグラフィ手法(寺門、久保田)

◆ マイクロヒーターアレイによって駆動される熱応答性ゲルを用いたピラーアレイの動的制御(藁谷)

◆ 浮遊型マイクロインターフェイスロボット(永田、矢ノ下、永嶺)

論文投稿用の補足データ取得実験、ドローンの空中静止制御、手・指の表情(SMA-wire 駆動)

◆ HD-DVDの光ピックアップを用いたマイクロデバイス特性計測システムの構築(宮下)

◆ ボクサーロボットを使ったリンク機構型多脚歩行機構の最適制御手法(馬籠)

◆ ジャイロセンサと加速度センサを用いたシステム状態変数(ロボットの位置と姿勢)の正確な推定手法(小笠原)

◆ 卓上型マイクロロボット(趙,綾部)

主に倒立振子ロボット.最終的にはスマホを制御器として障害物回避や軌道計画、段差まで対応させる(テーブルを乗り降りするため70cmが目標、飛び上がるジャンプ機構と飛び降りるショックアブゾーバの両立を目指すので、ものすごく野心的)

◆ マイクロテレイグジスタンス(栗原)

今年はVRゴーグルも使いたい

◆ ロボット教育のためのハードウェア開発(石見)

小中学生へのプログラミング・計測制御の必修化が迫っており,安価で教育効果の高いロボット教材の開発が求められています.柏付属中・谷先生と共同研究予定.

◆ MEMSキャスト法による複雑形状ゲルの作成法(木暮)

最終的な目標は、自律型ケミカルマイクロロボットの創成

◆ 微小落下体の設計法(山根)

微小落下体の詳細な特性実験(4年生可)、MEMSプロセスの確立(院生テーマ)

◆ マイクロサーボユニットのバリエーション展開と特性評価(秋元、立山)

最終目標はZの完全自動変形

◆ 自動車Aピラーの視差誤認識防止のための立体視ディスプレイ(米持)

一般化して、立体視のための多方向多映像投射ディスプレイ、特に今年はスタッキング型3DキューブLEDアレイディスプレイを試作したい.

◆ 分散型RTミドルウェアによる群ロボット制御(山本,近藤佑哉)

マイクロロボットは個々の能力は低いので,群として協調作業を行う用途が想定される.このとき,個々のマイクロマシンをプログラムしていたのでは,プログラミング負荷が高すぎる.RT-middleware を分散システムに適合させることで,ユーザーは群全体を1台のロボットのように操作することができるようにすることを目標とする.i-Cart mini との連携.

◆ インフラ整備用マイクロロボット(宇佐美,清野)

ドローンでもクライマーでも良いが,簡単な操作でインフラ整備ができることを目的としたマイクロロボット.

◆ 振動通信(高沢,榎本,宝)

表面伝播する振動を利用した近距離通信手法の確立.直接に接しないと通信できないので,非常に秘匿性が高い.

◆ 全身に触覚センサを持つインターフェイスロボット(江川)

二足歩行ボビーロボットをインターフェイスロボットとして用いる。マウスやキーボード、タッチパッド以外にも人型であることを利用したユーザーインターフェイスの有用性を検討する.

◆ みつばちのダンス言語による情報伝達モデルの構築(杉山)

ミツバチが行うダンス行動と伝達する情報の対応関係や行動発現メカニズムを明らかにすることで,脳内中枢神経系の処理の本質を考える.

◆ 差動型車輪移動機構を持つロボットの迷路探索(西田)

災害時の要救助者探索が最終ゴールである.